この記事の想定読者
- 「最小曲線半径の表」をすぐ確認したい人
- R=150という数字がどこから来るのか、根拠から理解したい若手技術者
平面線形の検討で最初にぶつかる数字が、最小曲線半径です。結論の表を先に置きます。出典は道路構造令第15条です。
最小曲線半径の表(第15条)
| 設計速度(km/h) | 曲線半径(規定値) | 特例値 |
|---|---|---|
| 120 | 710 m 以上 | 570 |
| 100 | 460 m 以上 | 380 |
| 80 | 280 m 以上 | 230 |
| 60 | 150 m 以上 | 120 |
| 50 | 100 m 以上 | 80 |
| 40 | 60 m 以上 | 50 |
| 30 | 30 m 以上 | ― |
| 20 | 15 m 以上 | ― |
対象は「車道の曲線部」、つまり屈曲部のうち緩和区間を除いた円曲線の部分の中心線の半径です。地方部の設計でよく使う設計速度60・50・40の行(150・100・60)は、自然と頭に入るくらい繰り返し使うことになります。
根拠式 ― R ≧ V²/127(i+f)
この表の出どころは、カーブを走る車に働く力のつり合いです。曲線部を走る自動車には遠心力が働き、それを支えるのは①路面の片勾配(i)と②タイヤと路面の摩擦(f)。横すべりしないための条件を整理すると、次の式になります。
R ≧ V² / 127(i+f) R: 曲線半径(m)、V: 設計速度(km/h)、i: 片勾配、f: 横すべり摩擦係数。速度の2乗で必要半径が効いてくるのがポイントです。設計速度が60から80に上がると(1.33倍)、必要な半径は約1.8倍(150→280m)に跳ね上がります。
もう一つ大事なのは、この式が摩擦の限界ぎりぎりで決められているわけではないことです。fの設計値は、タイヤが滑る限界よりずっと小さい値が使われています。乗っている人が「怖い」と感じない遠心加速度に抑える――つまり乗心地とのバランスで決まっているのが、構造令の最小曲線半径です。
現場での使い方 ― 規定値で粘り、特例値は根拠とセットで
線形計画の基本は、まず規定値以上で通すこと。表の値はあくまで「最小」であって、推奨値ではありません。地形に余裕があるなら、できるだけ大きな半径でゆったり通すのが原則です。
それでも地形が厳しく、規定値では家屋移転や大規模な切土が避けられない――そういう箇所で初めて特例値(60km/hなら120m)が選択肢になります。このシリーズで繰り返している作法ですが、特例値を使うなら「なぜ規定値では成立しないのか」を、規定値案との比較(支障物件・土工量・事業費)とセットで協議に持ち込むこと。発注者は、その根拠を決裁と検査で説明する立場だからです。
また、曲線半径は単独では決まりません。同じカーブに対して、片勾配(第16条)・拡幅(第17条)・緩和区間(第18条)・視距(第19条)が芋づる式についてきます。半径を1つ動かすと、これらが全部動く。次回は、根拠式の「i」――片勾配を解説します。
まとめ
- 最小曲線半径は設計速度で決まる(第15条)。60km/h→150m、50→100m、40→60m
- 根拠は R≧V²/127(i+f)。遠心力を片勾配と摩擦で支え、乗心地まで考慮した値
- 表の値は「最小」。地形が許す限り大きな半径が原則、特例値は根拠整理とセット
- 半径を動かすと片勾配・拡幅・緩和区間・視距が連動して動く
※出典: 道路構造令 第15条(曲線半径)。2026年6月時点の条文で確認しています。道路構造の基準は各道路管理者の条例に委任されているため、業務では該当する条例・最新の条文をご確認ください。