公務員技術職から建設コンサルへの転職 ― 「発注者の経験」は、こう活きる

この記事の想定読者

  • 公務員の土木技術職として働きながら、建設コンサル(民間)への転職が頭をよぎっている人
  • 「安定を手放して大丈夫か」「発注者で積んだ経験は民間で通用するのか」が気になる人

私は32歳のとき、地方公務員(発注者)を辞めて、建設コンサルタントに戻りました。その個人的な経緯は別の記事に書いたとおりです。この記事ではもう少し引いた目線で、「公務員技術職からコンサルへ転職する」という選択そのものを、判断材料として整理します。

結論を先に言うと、発注者で過ごした時間は、コンサルでは確かな武器になります。ただし、変わること・覚悟すべきことも当然ある。良い面と注意点の両方を、私の実感で書きます。

なぜいま「公務員→コンサル」が選択肢になりやすいのか

背景にあるのは、業界全体の人手不足と働き方改革です。技術者が足りない時代、コンサルは経験者を強く求めています。なかでも発注者側の実務を知っている人材は、後述するとおり即戦力になりやすい。売り手市場のいま、公務員技術職の経験は転職市場で正当に評価されやすくなっています。

かつての「公務員を辞めるなんてもったいない」という空気も、実態とずれてきました。詳しくは待遇の項で書きますが、「公務員=楽で安泰、民間=激務」という単純な図式は、少なくとも土木の世界ではもう当てはまりません。

公務員で得た経験は、コンサルでこう活きる

発注者側で働くと、受注者からは見えない景色が見えます。それがそのままコンサルでの強みになります。具体的には次の3つです。

  • 設計をチェックする目 ― 発注者は、上がってきた成果を照査し、決裁し、上席や住民に説明する立場。何が問われ、どこでつまずくかを知っている人が書く設計は、手戻りが少ない
  • 決裁と協議の勘どころ ― どんな資料なら決裁が通るか、協議をいつ持ち込めば喜ばれるか。発注者の段取りを肌で知っていることは、コンサルの実務でそのまま効く
  • 会計検査という緊張感 ― 受注者からは見えにくい、数年後まで続く説明責任。その重さを知っていると、根拠を残す設計・書類づくりが自然にできる

つまり、発注者経験者がコンサルに来ると、「発注者が何を見るか」を内側から知っている設計者になれる。これは、新卒からコンサル一筋で来た人にはない角度の武器です。

私自身、発注者の景色を知っていることが、コンサルに戻った今の一番の武器になっています。発注者が資料のどこを見るか、協議をいつ持ち込めば喜ばれるか――それが肌感覚でわかるのは、あちら側に身を置いた年月があるからです。

何が変わるか ― 裁量・スピード・現場

良いことばかりではないので、変わることも正直に。公務員からコンサルに移ると、働き方の質が変わります。

  • スピードと裁量 ― 役所の意思決定は段階を踏む。コンサルは民間の速さで動き、自分で手を動かして形にする時間が増える一方、納期のプレッシャーも直接かかる
  • 成果が見える、そして問われる ― 設計成果という形で、自分の仕事がはっきり残る。やりがいであり、責任でもある
  • 現場は必ずある ― コンサルで働く以上、測量・現地踏査・立会いはついて回る。デスクワークだけで完結はしない(近年の夏の暑さは正直しんどい)

「安定」の中身も変わります。公務員の安定は身分の安定。コンサルの安定は、技術と経験で食べていける安定。どちらが上ではなく、拠りどころが変わる、という話です。

待遇と働き方の実際

気になる人が多いはずなので、私の実例を正直に。ただし地場コンサルは会社による差がとても大きい世界なので、あくまで「私の勤務先の数字」として読んでください。

  • 年収は30代で600万円に乗った。地方の地場コンサルでこの水準なら、十分に現実的
  • 残業は月10時間程度。年間休日は130日弱

背景には、やはり人手不足と働き方改革があります。人が採れない時代に激務を放置する会社からは、人が逃げる。だから生き残っている会社ほど働き方の改善が進んでいる――というのが私の実感です。「民間=激務」のイメージだけで選択肢から外すのは、もったいない時代になっています。

向く人・慎重になったほうがいい人

最後に判断軸を。私が2回の転職で確かめてきた軸は、公務員→コンサルでもそのまま使えます。

  • 向いている人 ― 自分の頑張りでは変えられない構造(停滞した組織、新しいやり方が通らない等)に消耗している人。設計で手を動かし、成果を残したい人。発注者経験を活かして”厚い”技術者になりたい人
  • 慎重になったほうがいい人 ― 「給料だけ」「人間関係が少し嫌」程度が理由の人。痩せた理由で動くと、次でも同じ理由で動きたくなる。いま持っている円滑な人間関係という幸福も、棚卸ししてから天秤にかける

ひとつ補足を。公務員技術職の経験は、自治体の規模や担当で幅が大きく変わります。同じ年数でも、扱った業務の種類で市場での見え方は違う。そして転職先のコンサルも会社ごとに性格が違います(大手か地場か、得意分野、働き方)。「公務員→コンサル」とひとくくりにせず、自分が何を持っていて、どんな会社で何を取りに行くかで考えるのが、結局いちばん確実です。

まとめ

  • 発注者経験は武器になる ― 設計を見る目・決裁の勘どころ・会計検査の緊張感。「発注者が何を見るか」を内側から知る設計者になれる
  • 変わるのは働き方の質 ― スピードと裁量、成果の見える化、そして現場。「安定」の拠りどころが身分から技術へ移る
  • 待遇は思うほど悪くない ― 人手不足と働き方改革で、生き残る会社ほど条件は改善している(※会社差は大きい)
  • 動くなら判断軸を持って ― 変えられない構造か/健康ラインは絶対/痩せた理由では動かない

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