27歳でコンサルから公務員技術職へ ― 働きながらの受験と、転職して見えたもの

この記事の想定読者

  • 民間の土木(コンサル・建設会社)で働きながら、公務員技術職への転職を考え始めた20代
  • 働きながら公務員試験に受かるのか、入った後どうなるのかを、経験者の言葉で知りたい人

27歳のとき、私は地場の建設コンサルタントを辞めて、地方公務員の土木技術職に転職しました。受験勉強は働きながら。合格して発注者側に回り、そこで5年間働きました(その後、縁あってまたコンサル側に戻るのですが、それは別の話です)。

「公務員 技術職 転職」で検索すると、待遇や安定の話はたくさん出てきます。でも、民間の土木から実際に転身した人間の、勉強の実際と入ってからの現実を書いた記事は意外と少ない。この記事では、その両方を正直に書きます。

なぜ公務員技術職だったのか

動機は、別の記事に書いたとおりです。地場コンサルで来る日も来る日も測量現場に出るうち、他社の同世代が設計を触っているのに自分には設計の知識がない、と気づいてしまった。環境を変えなければこのままだ、と考えたときに視野に入ってきたのが、発注者側――公務員の技術職でした。

働きながらの試験勉強 ― 専門科目は「公式を覚えて当てはめる」

受験勉強は、仕事を続けながらやりました。辞めてから挑む背水の陣も選択肢ですが、生活がありますし、落ちたときのリスクが大きすぎる。働きながらで十分戦える試験だった、というのが経験者としての実感です。

土木の技術職採用は、数的推理などの教養試験に加えて、専門試験があります。構造力学、水理学といった、大学の土木工学の科目です。「専門」と聞くと身構えますが、ここで伝えたいことが一つあります。

構造力学や水理学の試験問題は、公式を覚えてしまえば、当てはめるだけで解けるものが大半です。私は市販のテキストを買って、働きながらこの「公式を覚えて当てはめる」練習を繰り返しました。ゼロから理論を理解し直す必要はありません。出る公式を覚え、典型問題に当てはめる。この割り切りが、時間のない社会人受験では特に効きます。

むしろ民間で働いている人には追い風もあります。現場で測量や図面に触れてきた人間にとって、専門科目の用語は完全な初見ではないからです。科目ごとの具体的な勉強法とテキストの使い方は、長くなるので別の記事にまとめる予定です。

入ってからの現実 ― 測量の経験は、ほぼ通用しなかった

合格して発注者側に回った私を待っていたのは、想像と違う現実でした。コンサル時代に積み上げた測量の経験が、発注者の世界ではほとんど通用しなかったのです。

発注者に求められるのは、設計の知識です。設計を理解していなければ、コンサルの成果をチェックすることも、決裁を回すことも、住民や上席に説明することもできない。つまり私は、「設計の知識がない」ことから逃げるように転職した先で、設計の知識を毎日問われることになりました。結果として、公務員としての5年間は、すべてが勉強の5年間になりました。

これを失敗談と読むか、成功談と読むかは人によると思います。私は後者です。知識を要求される場所に身を置いたからこそ、設計力が身についた。楽になるための転職ではなく、成長せざるを得ない環境への転職だった、ということです。

得たものを一つ挙げるなら ― 視野が広がった

転職して得たものを一つ挙げるなら、視野が広がったことです。

受注者だったころに見えていた世界は、いま思えば業務の一部分でした。発注者側に立つと、その手前と後ろが見えます。工事や業務がどんな予算の流れから生まれるのか。資料がどう決裁されて、誰が何に責任を負うのか。会計検査という、受注者からは見えない緊張感が組織をどう動かしているのか。

この「発注者の景色」は、コンサルに戻った今、私の一番の武器になっています。発注者が資料のどこを見るか、協議をいつ持ち込めば喜ばれるか。それが肌感覚でわかるのは、5年間あちら側にいたからです。

正直に書いておく注意点 ― 自治体の規模で経験は変わる

良いことばかりではないので、これも正直に。私がいたのは小規模な自治体で、扱う工事は同じような規模の繰り返しになりがちでした。数年経つと、技術者として新しい挑戦が減っていく感覚――停滞感が出てきたのも事実です。組織が保守的で、新しいやり方が通りにくい場面もありました。

一方で、よその自治体から応援派遣で来ていた職員の知識と熱量に触れて、強く刺激を受けたこともあります。同じ「公務員技術職」でも、自治体の規模や置かれた状況で経験の幅は大きく変わる。受験先を選ぶときは、待遇だけでなく「どんな仕事を、どの規模でやっている役所か」まで見ておくことをすすめます。

まとめ:こんな人には、現実的な選択肢になる

  • 試験は働きながらで戦える。専門科目(構造力学・水理学)は「公式を覚えて当てはめる」の割り切りが有効
  • 入った後は甘くない。求められるのは設計の知識で、民間での現場経験がそのまま通用するとは限らない
  • それでも、発注者の景色を知ることは技術者人生の大きな財産になる。視野は確実に広がる
  • 自治体の規模で経験の幅は変わる。受験先選びは待遇以外もよく見る

公務員への転職は「逃げ」だと言う人もいますが、私の実感は違います。行き先がどこであれ、成長せざるを得ない環境を自分で選んで動くこと。それは逃げではなく、キャリアの設計です。

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