設計変更はなぜ嫌がられるのか ― 両方の席から見た本音と、通る変更の出し方

この記事の想定読者

  • 設計変更の協議がなかなか通らず、苦労した経験のある施工業者・コンサルの技術者
  • 「設計変更」という言葉は聞くが、なぜあんなに揉めるのか分かっていない若手

公共工事や業務の世界で、現場が一番ぴりつく言葉の一つが「設計変更」です。契約した後に現場の条件が変わったとき、数量・金額・工期といった契約の中身を変更する手続き。仕組みとしては当たり前に用意されているのに、実際にやろうとすると、発注者の顔が曇る。

なぜ発注者は設計変更を嫌がるのか。受注者・発注者・発注者支援と三つの立場を経験した人間として、それぞれの席から見えた本音を書きます。そして最後に、「それでも通る変更の出し方」まで。

立場で違う、お金への温度 ― 施工業者・コンサル・発注者

まず前提として、設計変更をめぐる三者の温度差を知っておくと、話が見えやすくなります。

私の経験では、コンサルと工事の施工業者を比べると、施工業者のほうが金額にうるさい傾向があります。悪い意味ではありません。施工業者は資材に大きなお金がかかっている。現場条件が変われば、実費が直接動く商売です。数量が変わったのに金額が変わらなければ、その差は会社の持ち出しになる。金額に厳しくなるのは当然なのです。

一方の発注者には、別の事情があります。それが次の話です。

発注者が増額を嫌がる、2つの本音

本音① 予算は、決まっている

発注者の事業は、決まった予算の枠の中で動いています。設計変更で増額するということは、その枠のどこかをやりくりするということ。「現場の実情に合わせて増やしてほしい」という受注者の言い分が正しくても、発注者の手元に無限の財布はありません。増額の協議が渋くなる第一の理由は、シンプルにこれです。

本音② 「なぜ発注前に見抜けなかった」と、上から言われる

そしてもう一つ、発注者の中にいた人間しか書けない本音を。設計変更の中でも、発注前に予期できたはずの事案は、担当者が上席からちくちく言われるのです。

「なぜ発注の段階で気づかなかったのか」「調査が甘かったのではないか」。変更の決裁を回すたびに、その問いが担当者に返ってきます。さらにその先には会計検査もある。変更の根拠が弱ければ、数年後に検査の場で問われるのは担当者自身です。発注者が設計変更に慎重なのは、性格の問題ではなく、こういう構造の中に立たされているからです。

鉄則:事前承認。後出しは、絶対に承認されない

ここまでの構造を踏まえると、受注者が守るべき鉄則は一つに絞られます。

事前承認を心掛けること。後出しは、絶対に承認されません。条件が変わる場合は、絶対に「協議」を行うこと。

やってしまってから「実はこう変えました、お金をください」では、発注者は承認の根拠を後付けで組み立てることになります。上席にも検査にも説明できない。だから通らない。協議の記事でも書いたとおり、出来てしまった後の協議が一番もめるのです。

「これくらいの変更なら、報告だけでいいだろう」という現場判断が、一番危ない。金額や数量、工期に響く可能性が少しでもあるなら、動く前に協議。これは施工でも業務でも同じです。

通る変更の出し方 ― 発注者に「説明の武器」を渡す

では、どう出せば変更は通りやすいのか。発注者の2つの本音を裏返せば、答えは見えてきます。

  1. 「予期できなかったこと」を立証する ― 発注者が上から叩かれるのは、予見できた事案。逆に言えば、当初の設計図書や調査からは知り得なかった条件だと示せれば、発注者は守られる。現地の状況写真、当初図書との対比、発見の経緯。この立証が変更協議の核心
  2. 根拠・数量・金額をセットで揃える ― 変更の理由だけでなく、変わる数量と金額の整合まで一式で。発注者がそのまま決裁と検査に使える形にする
  3. とにかく早く出す ― 予算のやりくりにも時間がかかる。年度末際の増額協議ほど嫌われるものはない

要するに、発注者を「査定する敵」ではなく「一緒に上席と検査を突破する相手」として見ること。資料の記事から繰り返している、このサイトの結論と同じところに着地します。

設計者にも言いたい ― 変更を減らすのは、設計の仕事

最後に、コンサルの設計者として自戒を込めて。施工段階の設計変更の少なくない部分は、設計段階の調査や現地踏査の精度で防げたものです。現地と図面の差異、見落とされた支障物、甘い地質の想定。設計の手抜かりは、数年後、施工業者と発注者の苦労になって返ってきます。

設計変更の話は、受注者のテクニック論で終わらせるべきではなく、「最初の設計をどれだけ現地に忠実に作るか」という設計品質の話でもある。測量と踏査を大事にしろと書き続けているのは、これが理由です。

まとめ

  • 施工業者が金額に厳しいのは、資材という実費を抱えているから。発注者が渋いのは、予算の枠と「なぜ見抜けなかった」の圧力があるから
  • 鉄則は事前承認。後出しは絶対に承認されない。条件が変わるなら、動く前に必ず協議
  • 通る変更の鍵は「予期できなかったことの立証」+根拠・数量・金額のセット+早さ
  • そもそも変更を減らすのは、設計段階の調査と踏査の精度。設計者の責任でもある

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